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都内某私立男子校で音楽教師をしています。カイミングアウトしていませんが僕はゲイです。
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05.03.00:36

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  • 05/03/00:36

08.21.23:26

03:ニックとの出会い

音楽教師とはいえ、なかなか大金を払ってオペラを見てくれる友達もいない僕は、いつも一人でコンサートに通っていました。

オペラと言うのは独特の趣味で、クラシックのピアノやバイオリンを聞く人でも、オペラは絶対に聞かない、という人がいるくらい、特殊なジャンルです。平均以上の生活レベルの人も、「オペラなど一生聴かない」と思って生きている人がほとんどですから。

また、オペラは高価です。たとえば海外のオペラを日本で聞く場合、S席で6万円、一番安い席でも3万円くらいするものもあります。(これは海外のオペラハウスのセットなどを全て日本にもってきて公演しているのでものすごく高いのです。一流オペラはこのくらいするものですが、安いオペラはもっと安いんですよ)

オペラの客層は実に様々ですが、生活レベルの高そうな人が多いのは事実だと思います。(小泉首相や大金持ちの鳩山さんなんかも確かオペラを好んでいたはず)

ニックもそんな裕福層のひとりで、そして僕と同じ連れのいないオペラ愛好家らしく、たまたま僕らは隣り合わせに座る事になった。

ニックは背の高い白髪混じりの男性で、仕立ての良いスーツ、よく磨かれた皮靴、淡いピンク色に輝くその腕時計は、プリウスが一台新車で買える位の値段がするはず。方や僕は学校の音楽教師。彼との生活レベルの差はオペラと阿波踊りくらいの差があるのを感じていました。

しかしオペラというのは長いもので、1時間2時間ととなりに座っていると、なんとなく一体感というか共存感が生まれてくるのです。

曲を聴いているときに、どれだけ静かにしているか、舞台からふと目をそらす瞬間、足を組みなおすタイミング、休憩時間になったときの小さな咳払い。

公演が終わった時、大きな拍手がわき上がり、ニックは立ち上がってBravo!と喝采を送ったのでした。おとなしく座っているだけの僕としてはちょっと驚いたわけですが・・・。

しばらく立って拍手を送っていたニックは再度イスに座り、僕のほうをちらっと見ました。彼は少し訛りのある英語で「実にすばらしかった、そうおもわないかい」と話しかけてきたのです。

僕は高校の頃少しだけ留学したこともあって、多少の英語がわかったのでニックと少しオペラの話をしました。

話すと僕たちには共通点が多いことがわかりました。お互いに、オペラを一緒に見に来る相手が身近にいない。だれもオペラの話を分かってくれない。こんなに素晴らしいものなのに!というものでした。

僕たちの出会いは神奈川県民ホールで、近くにあった薄汚れたバーのようなところに入ってスコッチをご馳走になったのを今でも覚えています。

このとき僕はニックがゲイだとはつゆとも知りませんでした。

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